父と子と聖霊の御名によって　アーメン。

 

　教会歴の1年の終わりも近づいています。来週の日曜日が降臨節前主日となりA年の最後の主日となります。マタイによる福音書もあと一回で終わります。

 

　本日の福音書は先週に引き続き、主イエスが再び私たちの所へお出でになる時、つまり再臨の時について、譬えを使って語られます。

｢マタイによる福音書｣の21章から25章は、主イエスが十字架に架けられる前の日曜日から木曜日までの間に語られた事が記されています。最後の言葉として、語りの内容も厳しいものになっていきます。

 

本日の福音書を振り返って見ましょう。

ある金持ちの主人が使用人3人にそれぞれ資金を預けて旅に出るのです。

　最初の使用人には5タラントン預けます。タラントンはその頃イスラエルで使われていた貨幣の単位で、1タラントンは6,000デナリに相当します。1デナリは労働者1日分の賃金でしたので、6,000日分の賃金の額に相当します。1時間あたりの最低賃金を800円として現在の価値に直してみましょう。1日8時間労働としますと、1日分の賃金は6,400円ですから、6,400円に6,000をかけると3,840万円となります。最初の使用人は5タラントンと預けた事になっていますから、3,840万円の5倍、すなわち1億9,200万円を預けたことになります。

　二人目の使用人には2タラントン、すなわち7,680万円、三人目の使用人には1タラントン、すなわち3,840万円を預けて旅に出かけたのでした。

　主人が財産を使用人に預けたと言う事は、使用人はそれを使って主人の代わりに商いをして、利益を得なさいと言うことなのです。主人は使用人の力量を見て預ける額を決めたようです。

　さて、数年後主人が帰ってきました。使用人はその成果を主人に告げるのです。最初の使用人は5タラントンを2倍にした事を報告しました。二人目の使用人も2倍にした事を報告しました。主人は大変喜んで、「これからも多くのものを任せる」と告げます。

　ところが三人目の使用人は、主人が商売について厳しいので、預かったお金が無くなるのを恐れて地面の中に埋めていたと言うのです。主人は怒ってこの使用人の1タラントンを最初の使用人に渡してしまうのです。

 

　この譬えは次の様に理解することが出来ます。主人は主イエス、使用人は私たち、タラントンは私たちに託された賜物としてこの物語を見ていくとはっきりして来ます。

 

　主イエスは私たちに莫大な可能性を秘めた賜物を託され、昇天されました。そして再び私たちの前に姿を見せられます。その時に私たちはその莫大な賜物をどのように生かしたかと言うことを問われるのです。

 

　私たちは私たちに託された主イエスのみ言葉（福音）を形にして伝えるために賜物を使わなければならないのです。

 

　み言葉を伝えるためには、直接的な方法と間接的な方法があります。直接的な方法としては、聖書を共に読むとか、教会に一緒に案内するとかの方法があるでしょう。間接的な方法としては、私たちが主イエスの言われた隣人愛の実践をしていくことです。ローマ時代にローマの国の多くの人々がキリストの教えに導かれたのは、直接的な方法ではなくて、皆で楽しく食事をして、聖書を読み、祈るクリスチャンの生活を見て導かれたと言われています。

 

　

　「愛」は抽象的な言葉で形が見えないと言われますが、主イエスの言われる「隣人への愛」を形に代える力が「賜物」なのです。

　この力を使ったときに相手から「ありがとう」と言う言葉が返ってきたとき、または声にならなくても微笑みが返ってきたとき、その力は賜物なのです。

 

　私も大病を患いましたが、皆さんの祈りと神のご計画の内に、このように皆さんの前に戻ってくることが出来ました。皆さんから頂く励ましの言葉がや皆さんのお心遣いが身にしみて分かります。言葉を戴くだけで日増しに元の体に戻って行くことが分かります。言葉も癒やしの力になることがよく分かります。

 

　この「タラントン」と言う言葉は、現在では「タレント」として使われています。神様から与えられた能力という意味で使われたり、人を喜ばせる能力をもった芸能人を現すためにも使われます。

 

　さて、聖書の話に戻りますが、運用に失敗してタラントンを減らした時は主人は何というのでしょうか？

 

　私はたぶん主人である主イエスは許して下さると思います。使うことが重要なのです。三人目の僕は使わなかった事で主人の咎めを受けたのです。使って増えなくても良いのです。使う事が重要なのです。

 

　私たちも失敗を恐れず、神様からの賜物を充分に使って、主イエスが再び来られる時に失敗も含めて報告できるような信仰生活をしたいと思います。

 

　タラントン（賜物）は使っても使っても減ることはないのです。逆に使えば使うほど増えるのです。どんどん使って増やすことが出来るのです。先週の｢油｣の話もタラントンを使えば使うほど増やしていく事が出来るのです。